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粋な計らい

始まり

もし、私が伊集院家に生まれていなかったら。
もし、私が伊集院家の一人娘ではなかったら。
たまに、思ってしまうif文。
それは彼に普通にアピールしている女の子たちがうらやましいから、出てくるんだと思う。
男装している自分が悲しくなるときが彼に出会って増えてしまった。
嫌味を言うことでしか、彼に接触できないから。嫌味を言ってしまう自分。
そして、帰ったら、後悔で自分を責めてしまう。
救いといえば、毎日曜日の決まった時間にかかってくる彼からの電話。
嫌味ばかりの自分なのに、毎回かけてきてくれる彼に、普通に接触したいという気持ちが溢れ出てきてしまう。でも、親しくなりすぎると、卒業後の別れがつらくなる。
じゃあ、彼にだけ、真実の姿を見せる? いや、それはできない。だって、家訓を破るわけにはいかないもの。
彼のことを考えるたびに、同じ所で考えがぐるぐる回ってしまう。

そんな私に、外井が気を使って、言ってくれた。
「レイ様、気分転換してこられたらいかがですか?」
「気分転換?」
「はい。今までずっとがんばってこられたのですから、たまには息抜きしてこられたら、いかがですか? レイ様本来の姿に戻られて」
外井からの悪魔の誘惑に、私はのった。
こんな私から少し逃れたかったから。

2018年5月2日作成
2018年5月2日更新
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