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娘スクランブル

本編

 高校を卒業して始めた一人暮らし。慣れない事の連続に戸惑う事も多かったが、それにも慣れ、平分で退屈な日常を暮らしていた。
“ピンポーン、ピンポーン”
 真夜中に激しく鳴らされるチャイムに戸惑いながら、近所迷惑なので、相手も見ずにドアを開けた。
「誠~」
 その途端、綺麗なドレス姿で飛び込んできたメイは、二年の時を思い出させる。
(そういや、今日、メイのバースディだったな)
 それと同時に、離れているという事で一緒に祝う事が出来ないからと、事前にプレゼントを送っておいた事も思い出した。
「こんな所にいるのもなんだから、奥に入れよ」
 玄関の扉を閉め、メイを部屋の中に招き入れる。
 お茶を出し、少しメイが落ち着いたのを見計らってから話を切り出す。
「どうしたんだ? メイ。何かあったのか?」
 その途端、俺はタックルするように抱きついてきたメイに、押しつぶされてしまった。
「誠~。メイは他の奴のお嫁になりたくないのだ。嫁なら誠のになるのだ」
 泣きながらのメイの言葉に、喜びとともに、疑問もわく。
「お嫁って、見合いさせられたのか?」
「見合いじゃないけど、そんな感じ。姉様が拒否したから、すべてがメイに回ってきたのだ」
 俺に抱きついたまま、メイは泣き続ける。
 多分、今日の誕生日パーティーで若い男の人をかなりの人数、紹介されたんだろう。それで混乱して俺の所に…。
(今はまだ約束しかしてやれないけど、必ず迎えに行くから)
 気持ちをこめて俺のプレゼントがはめられている左手を強く握りしめる。
「誠?」
 不思議そうに俺を見ていたが、俺の意図を察したのか、顔を赤らめる。
「メイ。今はそんな約束しかしてやれないけど、いつかは必ず迎えに行くから」
 追い打ちをかけるように、俺は気持ちを告げる。
「うん、待ってる。いつまでも、待っている。メイには誠じゃないといやだから」
 顔を赤らめながら意思表示するメイを、ぎゅっと抱きしめる。
「だから、今日はもう帰れ。これからのためにも泊まらない方がいい。誰か外で待ってると思うし…」
 今すぐに一つになりたいという気持ちをぐっと押さえて俺は言う。
「いや、帰りたくない。メイはここにいる」
 俺の気持ちも知らずだだをこねるメイのほほを思わず叩いてしまった。
「駆け落ちするんだったらそれでもいいかもしれない。でも、俺はメイの家族に認めてもらいたいんだ。まだまだ世間知らずの若造だけど、メイを一生大事にしたいから」
 想いを込めて言う俺を、メイはきょとんとした表情で見ていたが、最後にはわかったらしくうなずいた。
「わかったのだ。今日は姉様と一緒に帰るのだ」
 明るい表情に戻ったメイに俺は安心する。
 落ち着いた所で、俺は疑問に思っていた事をぶつけた。
「姉様って、誰? お兄さんはいたのは知っているけど…」
「秘密事項だけど、兄様が姉様だったのだ。分家のメイは知らなかったけど、伊集院本家には高校卒業するまで男の姿でいなければいけないという家訓があるのだ」
 次々と知らされる事実に俺は驚愕する。分家という事は姉様といっていても本当の兄弟じゃなく、従兄弟らしい。でも、俺の知ってる二人はそんな事は感じさせないほど、仲がよかった。
「そうだったんだ。もしよかったら、お姉さんにも挨拶出来るかな?」
「うん、お姉様を呼んでくるのだ」
 メイは笑顔で言うと、立ち上がって玄関に行ってしまった。
 すぐにドアが開いた音がすると、綺麗な女性とともにメイは帰ってきた。
 確かに綺麗な女性は前にあったメイのお兄さんの面影がある。
「神谷君だったわね。私の見込み通りの子で安心したわ。難儀な妹だけど、末永くよろしくね。私はあなた達の味方だから」
 優しく微笑む綺麗な人に、俺は力強くうなずいた。

 その後、俺達はしびれを切らした外井というレイさんのお付きが迎えに来るまで、楽しく話した。
 伊集院家という巨大な家に入っていける自信は余りないけど、メイとレイさんがいれば大丈夫そんな気持ちにはなった。
 まだまだこれからも大変だけど、頑張っていく。決心した事があるから。メイを堂々と伊集院家に貰いに行くという夢が…。

END

2016年7月21日作成
2016年7月21日更新
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