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大きな樹の下で

本編

 初めて千晴君に普通に会う日。
 私は千晴君にお願いしてきらめき市に連れていって貰おうと思っている。
 千晴君が高校生活の間、通った市に。
 当日。私の希望に不思議そうな顔をしながらも千晴君はきらめき市に連れていってくれた。
 毎年のクリスマスに盛大なパーティが繰り広げられた伊集院邸。豊かな自然があるきらめき中央公園など。
 丁寧に説明してくれる千晴君は私がメールで感じていた人柄そのままだったので、私は考えていた事をする事に決めた。
「千晴くん、きらめき高校に案内してもらってもいい?」
 あらかた周りつくし、夕暮れが迫ってきた頃、そう切り出した。
 千晴君は少しびっくりしたみたいだったけど、すぐに笑みを浮かべ
「いいですよ。行きましょうか?」
と私の手を握ってくれた。
 私たちはそのままきらめき高校に向かった。
 きらめき高校の正門をドキドキしながらくぐる。かなり自由な高校という事で、話には聞いていたけど、一度も来る事はなかった。
 もし来ていたら千晴君に会っていたかもしれない事を考えると少し残念だけど、後悔はしていない。現に今会えているから。

「どこに行きますか?」
 校門をくぐったまま何も話さない私を心配そうに千晴君が見てきたので、私はとびっきりの笑みを浮かべて言った。
「伝説の樹に行ってみたいな」
「伝説の樹ですか?」
 少しいぶかしげな表情を浮かべている鈍感な千晴君にどう説明するか悩んでいると、校舎の方から歩いてきていた金髪の髪の綺麗な女の人が助け船を出してくれた。
「蒼樹君、可愛い彼女ね。伝説の樹なら私が案内するわ。あなたはしばらくしてから来なさい。女の子には女の子の事情があるんだから」
 綺麗に千晴君に向かってウィンクすると、千晴君の返事も聞かず私を連れてすたすたと歩きだした。
「ありがとうございます。部外者なのに助けてくれて」
 私に心の準備をする時間をさりげなくくれた彼女にお礼を言った。
「いいのよ。伝説の樹のご利益は何もきらめき高校生オンリーじゃないから。過去にきらめき高校生じゃない女の子とか男の子が相手でも結ばれたカップルはいるしね。どちらも片方はきらめき高校生だったけど」
 気さくにそう説明してくれる彼女に、私は安堵のため息をついた。
「さあ、着いたわよ。いつでもこの樹はあなた達女の子の味方だから、安心してね」
 大きな樹の下まで私を案内すると、彼女はお礼をいう間もなく立ち去っていってしまった。
 綺麗な人だったけど、少し寂しそうだったな。
 もしかして、告白出来なかったのかな? あんな綺麗な人だったら嫌う人いないと思うけど。優しそうな人だったし…。
 伝説の樹の下でそんな事を考えてると、顔を少し上気させた千晴君が走ってきた。
 いきなり高まりだした胸の鼓動。静まれと言ってもいう事を聞いてくれない。なんていったって生まれて初めての告白だから。
「待たせてごめん」
 頭を下げて謝る千晴君に、頭を振る事で気にしていない事を教える。深く一つ深呼吸してから、私は言った。
「こんな所まで来てもらってごめんなさい。あなたにどうしても伝えたい言葉があったから、来てもらいました」
 千晴君は気にしてないよと告げるように頭を振ってくれる。
「友達からと言っていたけど、私は千晴君が好きです。友達としてじゃなく恋人として付き合って下さい」
 言うだけいってしまうと、千晴君を見ていられなくなってしまって、顔をふせた。
 そんな私を千晴君は優しく抱きしめてくれる。
「僕、嬉しいです。こんなすぐにあなたからそんな言葉を聞けるとは夢にも思っていなかったから。勿論、オッケーです。僕でよかったら恋人として付き合いましょう」
 千晴君の嬉しそうな言葉に答えるように、私も千晴君を抱きしめた。
 卒業式の日じゃなく、私がきらめき高校生じゃなくても、この樹は私たちを見守ってくれる。だって、樹は二人が思っている限り二人の側にあると思うから。二人が思い続けている限り二人の愛は永遠だから。

END

2016年7月21日作成
2016年7月21日更新
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