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夏の風物詩 続:一途
 最近、メディアに存在を取り上げられる事が多くなったせいで、姿を全く見えなくなる俺を疑いのまなざしでみている人間がふえているらしい。
 まあ、普通から考えたらそうだろうな。
 ナスティの別荘が表立っての居住地になっているが、張り込みしても出てくる姿があまりなく、逆に外から訪れることが多いんだからな。
 さすがにまずいと思い、ナスティの別荘に住みだしたのはいいが、実験施設が整っていないところでは、俺の仕事はやりにくい。
 俺はナスティの家の近くに、住居兼研究所を見つけ、そこで住むことを心に決めたが、俺が思うような物件はなく、困っていた。
 そこで、思い出したのが、自分の父親が使っていた実験施設。
 海外にいる父親に交渉をし、使わせてもらう約束をとりつけることに成功した。
 が、そうなると問題になるのが、迦遊羅のこと。
 連れていきたいのはやまやまだが、煩悩京のまとめ役の一人を俺一人の都合で奪いたくない。
 俺はわからないように引っ越し準備をしながら、一人悩んでいた。

 その日も俺は二重生活にピリオドをつけるための荷物整理をしていた。
 向こうで住む家もほぼ決まりかけ、あとは煩悩京との連絡通路をどこに開いてもらうかを決めるところまで来ていた。
 迦遊羅が出かけている隙に、煩悩京での自分の住まいの片づけをしていると、いきなり、背後から頭を殴られ、抱きしめられた。
 気配から迦遊羅ということがわかる。迦遊羅は少し震えていた。
「迦遊羅?」
「当麻殿。私はそんなに信用がないのですか?」
 背中から聞こえてくる震えた声に、俺の胸に後悔が支配される。何故、大切な人に心配をかけることをしてしまったんだろうと。
 俺は、回された腕を強引に振りほどき、正面から彼女を抱きしめた。
「迦遊羅、ごめん。君を苦しめるつもりはなかったんだ。準備が整えば、すぐに言おうとは思っていた」
「じゃあ、どうしてこそこそと行動なさるのですか? もう私には興味をなくなったのかとも思いました」
 泣く迦遊羅の頭をやさしく撫ぜる。
「俺が君のことを興味なくなることなど、一切ないよ。ただ君と一時期離れなければいけないのがつらくて、言い出させなかったんだ」
 泣き続ける迦遊羅に、弱さゆえに言い出せなかった自分がすごく情けなくなる。
「本当ですか? 当麻殿」
「本当だよ。実は、迦遊羅と一緒に行きたいところがあるんだ」
 泣きやんだ迦遊羅に、ほっと胸をなぜおろし、用意していたチケットを迦遊羅に見せる。
「東京と大阪のチケットですか」
「そう、生まれ育った街を迦遊羅に見せたいと思って。後、今度、大阪に住居を決めたから、その時に説明しようと思っていた」
 正直な思いを迦遊羅に告げる。
 迦遊羅はそれでようやく笑顔を見せてくれた。
「ちゃんと、考えてくれていたのですね。ありがとうございます」
「もう少し早く言えばよかったと思うから、お礼は言われる筋合いはないよ。心配掛けてごめんな」
 俺は迦遊羅のほぺったに軽く口づけをした。
 迦遊羅は照れて真っ赤になる。
 そのあとは迦遊羅に手伝ってもらいながら、引越しの準備を続けた。

 旅行当日。
 俺と迦遊羅はのぞみに乗り、大阪に向かっていた。
 初めての遠出に、始終、笑みを浮かべている。
 その笑顔を見ていると、今まで連れだしてこなかった自分に少し後悔してしまう。
「当麻殿、どうされました?」
「いや、迦遊羅をあまりデートに連れだしていなかったなと想って」
 この前の件以来、迦遊羅には自分のことを伝えていこうと思った俺は、正直に気持ちを伝える。
「遠出は確かに見新しくて楽しいですけど、人目を気にせずに当麻殿と過ごせるほうが私はうれしいです。当麻殿はますこみという人たちに狙われている立場ですし」
 俺の気持ちを察して、フォローしてくれる迦遊羅の頭を、俺はやさしく撫ぜる。
 今回、いつものマスコミに露出している姿と全く違う姿で動いているのがよかったのか、マスコミらしい気配は今のところはない。
 ただ三人ほどついてきているみたいなので、その三人から気付かれないようには注意はしている。
 まあ、こちらの生活もかなり慣れてきているから不自然な行動はないと信じたいが、少し不安にはなる。
「当麻殿、まだ考え事でも?」
「ごめん、迦遊羅。ついてきている三人のことを考えていた」
 ばれていないだろう思っている三人のことを迦遊羅に告げる。
「お三方のことですね。私がお願いして帰っていただくことはできると思いますが、それは当麻殿が望んでいないでしょう?」
 考えはわかってますよという感じで微笑む迦遊羅に、俺は笑顔でうなずく。

 そうこうしているうちに三時間の旅は終り、新大阪駅に到着した。

 人が多い新大阪駅で、目的地に向かう道のりを検討する。
 尾行をまくのは簡単なのだが、相手にわからないようについてこさせるのが厄介だ。
 ましてや、こっちは元地元。相手は初めてとなれば、余計に。
 聞き耳を立てていることを願いつつ
「迦遊羅、これから、御堂筋という混んでいる地下鉄に乗るから、覚悟してくれよな」
と迦遊羅に説明をする。
「わかりました。私は当麻殿にぴったりついていきます」
 迦遊羅の言葉を合図に、JRの改札を抜け、地下鉄に向かう。
 人ごみを避ける&わかりやすくするため、次の目的地である天王寺終点の電車に乗り込む。
「当麻殿、これからどちらの方へ向かわれるのですか?」
「新居にする予定の家だよ。俺が昔住んでいた家ではなく、親父が研究所代わりに使っていた家だから、ボロボロなんだけど、研究にはぴったりかなと考えていてさ。川と山に近いところだから」
「そうなんですか。それなら、掃除とかが大変ですね。やりがいはありそうですけど」
「俺も実際に行くのは久々だから、どういう状況か全くわからないんだよな。所有権は親父から譲ってもらったんだけど」
 思った以上にあっさり譲渡をOKしてくれた親父に、悲惨な状況と考えていた俺は少し暗くなる。
「どんな状態でも二人で頑張れば、綺麗になります。現に私たちの住まいもそうだったわけですし」
 笑顔で励ましてくれる迦遊羅に心が救われる。
「ありがとう、迦遊羅。がんばろうな」
 俺は笑顔でこたえ、丁度到着した電車を降りた。
10/03/27 20:48更新 / 旧作品集

■作者メッセージ
TOMO8さんのリクエストSSです。
申し訳ありませんが、私の今の力量ではこの続きはかけません(^_^;)
書き直しで、改めてリクエストにお答えしたいと思っています。

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