雑記

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うれしい誕生日
 アメリカに来て数年。いつもどうにか誕生日には帰国していたけど、今回は今取り掛かっている研究も大詰めということで帰国は見送っていた。

 当日、誕生日を祝ってくれるという研究仲間を断り、家を目指す。

 側で仲間に祝ってもらえなくても、今はPCがあるからリアルタイムで祝ってもらえるから、ネット越しでも会う為、急ぐ。

 途中でいつもより少し豪華な夕食とケーキを買い込んで、家に向かった。

 少し郊外に近い所に建つ、小さな一軒家。それが今の俺の住処。最初は知り合いとアパート暮らしをしていたが、一人になった事で一軒家にした。知り合いは人付き合いうまかったけど、俺は下手だからというのと、滞在年数などを考慮して…。

 少し厳重に鍵をかけている玄関をいつもの手順で開ける。

 そして、一歩を踏み出そうとした途端、クラッカーの洗礼を受けてしまった。

「誕生日おめでとう。当麻」

 三人分のお祝いの言葉に、すごく嬉しくなる。

 こんな事態になることを全く予想しなかったから。

 だけど、肝心な一人が足りない。探していると、背後から抱きしめられる。

「誕生日おめでとう、当麻。寂しいと思って祝いに来たぞ」

 耳元で甘い声で囁く声の持ち主を、みんなの手前もあって、拒否する。

「離せよ、征士}

だけど、いっこうも離そうとしない征士に、みかねた伸が言ってくれる。

「離しなよ、征士。今日は全員で祝うんだから。いちゃつくのはまた後にね」

 相変わらず、優しい口調ながら凄みのある伸に征士はしぶしぶ俺を解放する。

「君には悪いと思ったけど、キッチン使わせてもらったよ。どうせ、君の食生活はそんな所だと思ったから」

 俺が買い込んできた買い物袋を取り上げると、ため息をつきつつ、言う。

「本当相変わらずだね、君は。僕がここにいる間は作ってあげるけど、出来れば帰った後も少しはやるんだよ」

 俺に説教しながら勝手知ったる自分の家という感じで、奥に進む。

 今日の朝は殺風景だったとは思えない程、綺麗に飾り付けられたキッチンに、俺は感心する。

「すごい。どうしたんだ、これは」

「当麻んちのお母さんにも手伝って貰って飾り付けたんだよ。お前の家に内緒に入るのには頼むしかなかったからさ」

 そう説明する秀の言葉で珍しく俺の部屋の鍵を貰いたがった母さんのことを思い出した。

 黙りこくった俺に、包みに包まれた大きな箱を、遼が手渡してくれる。

「当麻の母さんからの誕生日プレゼント。友達水入らずの所に私がお邪魔するの悪いからって。またいつでも行ってやれよな」

 ジーンとなりながら、プレゼントを抱きしめる。今までは、ほったらかしにされるか、かまわれまくるのどっちかで、諦めと、鬱陶しいという気持ちがばかりだったから。

 そんな俺を皆がにこやかに見てくれる。

 こんな時、俺はいつも自分が仲間の末っ子、普通の子だと、実感する。これがあるから俺は今、頑張れると思っている。気張ってばかりじゃしんどくて体が持たないから…。

「さあ、そろそろ席に着いて。折角、当麻の帰りに合わせて作った料理が台無しになるからね」

 各皿にスープをよそおいながら言う伸に、大きな丸テーブルの席に、それぞれが思い思いの席に座る。

 当然のごとく、征士は俺の左隣に座り、秀が俺の右隣、遼が秀の隣に座った。

 空いた席に伸が座り、征士の手によって、冷やされていたシャンパンが開けられた。

“ポーン”

 いい音を鳴らして栓が飛ばされると、次々とグラスにシャンパンが注がれる。

 こんな時、年取ったなとか感じる。昔はいつもジュースだったから。

 全員にグラスが行き渡ると、遼が乾杯の音頭を取る。

「当麻の誕生日を祝って、乾杯!」

 カチンとグラスが重ねあわされ、それぞれが

「改めて、誕生日おめでとう、当麻」

と言ってきてくれる。

 皆が祝ってくれる嬉しさを俺はかみ締めながら、料理をたいらげる。

 食べながら話される話題は最近の皆の近況から、妖邪界の様子までさまざま。どれも研究三昧の俺には新鮮で夢中になる。メールで聞いてる事でも実際とじゃやっぱり話にならないから。

 食事が終わった後はデザート。

「時間かけられなかった」

という伸の言葉が信じられない程、おいしいケーキに甘いものが苦手な筈の征士も食べる。

 この家に引っ越してきてから、ずっと一人ぼっちだった俺は皆がいてる空間。それだけでも嬉しかった。

「じゃあ、そろそろ僕らはおいとまするよ。また明日来るから」

 時計を見て立ち上がる伸に、秀と遼も立ち上がる。最初からそういう約束が交わされていたらしく、征士は驚かない。

 まだ三人とも話したかったけど、まだこちらに滞在するみたいだから、俺は仕方なく玄関で彼らを見送った。

「やっと二人きりになれたな」

 ずっと見送っていった俺を、抱きしめてくる征士を拒否する。

「悪いけど、今日はしたくない。だから、離れろ」

 そんな俺をお構いなしに、抱きついてくる征士に言う。

「これからはいつでも出来るだろう。知らないと思ってるみたいだけど、無駄だぜ。お前の姉さんから連絡があったから」

 知らないと思っていたらしく、呆然としている征士に、俺は微笑む。

「だから、今日はゆっくり寝かせてくれよ。これからはさせてやるから」

 軽く征士に口付けると、用意していたバイクのキーを渡す。

「とういうわけで今日はお前もどこかに泊まれ。バイクはやるから。道場でも行く所はあるだろう?」

 俺は呆然としたままの征士を玄関から追い出し、鍵を閉める。

 俺を驚かせようとして黙っていたらしいが、相談ひとつなく決めた事が許せない。だから、今日のお預けはその罰。

 だけど、明日は優しくしてやる。今日とこれからのお礼に…。やっぱり傍で暮らせるのは嬉しいから。

 ありがとう、征士。くれぐれも浮気とけんかだけはしないでくれよな。

END
10/03/18 19:45更新 / 旧作品集

■作者メッセージ
後書き

当麻誕生日記念SSです。

当麻が嬉しい誕生日というテーマを頂いて書いたのですが、そのテーマにそえて書けたのか自信ありませんので、よろしければ感想お願いいたしますね。

では、読んでくれてありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。

亜衣より
これも、3、4年前ぐらいの作品ですね。
こちらは当麻の誕生日に書いた話になります。


この二人のはラブラブのばっかり残っていますね。
かなりとんでもないのも書いていたんですが。

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