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ひねくれもののバレンタイン
ひねくれ者のバレンタイン

俺のルームメイトであり、何となく恋人になってしまった征士。

あいつは何か俺にして欲しい事があると、決まって王様ゲームを言い出す。それのせいで、俺は征士と付き合う事にもなったのに、一度でもあいつを自分の思い通りにしたいから、懲りずに乗ってしまう。

そして、バレンタインが近づいた今回も乗ってしまい、俺は例のごとく負けてしまった。

「今回も私の勝ちだな。学習能力のないお前が私は愛しいぞ」

嬉しそうにすり寄ってくる征士を、追い払う。

「俺は嬉しくない! 勝算はあるのに何でいつも負けるんだ!」

「それは…お前が私程真剣ではないからだ。いつも私は望む物を手に入れようと必死だからな」

追い払われても懲りずに擦り寄ってくる征士に、俺は諦めて聞いた。

「で、今回は何だよ」

「お前の手作りチョコレートが欲しい」

真剣なまなざしで俺を見つめながら言ってくる征士を、どぎまぎしながらも笑い飛ばす。

「! チョコレート! 何、冗談言ってんだよ。お前、甘いものが嫌いだろ? それに、女の子から腐る程貰うくせに、俺からまでいらないだろ?」

そんな俺の言葉に、表情を曇らせたかと思うと、えらい意気込みで言ってきた。

「私はお前からが欲しいのだ。そうでなければ賭けなどしない!」

俺は征士の悲しい表情と意気込みに飲まれて

「わかったよ。作ってやるよ。ただし、味は保証しないからな」

と後で後悔するのをわかってながら言ってしまった。

 二月十三日、バレンタイン前日。

(ああ、何であの時作ってやるって言ってしまったんだろ?)

 手順のめんどくささに早くも後悔し、頭を抱えていた。

「当麻、作るって約束したんだろ? 僕がわざわざ教えてあげるんだから、手抜きは許さないよ」

 俺の先生役を買ってくれた伸。

 こいつさえいなければ征士だってこんな無茶な事は言わなかったかもしれない…。

不器用な俺がチョコ作りなんか出来る訳ないから。

「当麻、手がお留守になってるよ。なるべくチョコレートを細かく刻んで。その方が溶けやすいからね」

 仕方なく伸に言われた通り、チョコを細かく刻む。

「出来たのを乾いたボールに移したら、次は生クリームを温めて」

 今度は分量分の生クリームが入った小さな鍋を火にかけながら、伸に聞いてみる。

「なあ、伸。みんなこんなめんどくさい事をして、持ってきてるのか?」

「ううん。彼女達は君にとってはこれよりめんどくさい事をしてきてると思うよ。これはめんどくさがりやの君のために選んだ作り方だから…。さあ、温まってきたよ。それをチョコを溶かすようにしながらゆっくりと入れて」

 温まった生クリームをへらでかきまぜながらゆっくりとボールに入れる。

「じゃあ、それを混ぜ合わせて」

 へらでだまにならないように混ぜ合わせていくと、だんだんをチョコが柔らかくなってきた気がする。

 その事でようやく気持ちの余裕が出来た俺は

(すごいんだけど、可哀想だな。いくら征士に作ってもあいつ食べようとしないから。それを考えると俺はある意味幸せなのかもな)

と思いながら、全てが混ざるように丁寧に混ぜていった。

「そう、そんな感じだね。次は…そうだね。型に入れるのもいいけど、折角絞りだし用の袋もある事だし、クッキングペーパーに絞りだしていこうか?」

 伸は笑顔でそう言うと、生クリームについていた袋を俺に渡してきた。

「ここにチョコレートを入れれる限り入れていって」

 伸に言われた通り、俺はチョコレートを渡された袋の中に入れていった。

 その間に伸はクッキングペーパーを広げていた。

「入れたね。じゃあ、形はどんなんでもいいから、そこに絞りだしていって。形とかより、征士には君が作ったという事が大事なんだからね」

 伸に妙な励まされ方をされながら、俺はクッキングペーパーに絞りだしていった。

予想通り綺麗な形になったのは数少なかったが、それでも伸は一度も手助けしてくれなかった。

「後は少し乾かしてからココアをまぶそうか? 待つ間に後片付けをしよう。これぐらいは僕も手伝うよ」

 伸が手伝ってくれたお陰で片付けは早く済んだので、少し休憩する事が出来た。

「じゃあ、ココアをボールに入れるから、それに一個ずつまぶしていったのをこの箱にいれていって。余ったのは僕達で食べよう。皆にあげたら征士が嫉妬するからね」

 伸によってボールに入れられたココアを一つずつまぶしていき、なるべく綺麗なのを箱に入れ、汚いのをよけた。嫌々に作った物だけど、征士にはやぱり少しでもいいのをあげたかったから。

 綺麗にチョコが入れ箱を蓋し、

「お疲れ様、当麻。これで終わりだよ。後は明日、征士に渡すだけだね」

と伸に言われた事で、俺のチョコ作りは終了し、余ったのを二人で食べた。チョコレートは征士用に作ったから余り甘くなかったけど、美味しかった。

 翌日のバレンタイン。

 俺は頑張って作ったチョコが入った箱を、無言で征士に突き出した。何か言葉にするのは照れ臭くて恥ずかしかったから。

 それなのに、征士は

「当麻、今まで一番嬉しいチョコレートだ。味わって頂くからな」

と俺をぎゅっと抱き締め、そんな事を言う。

 俺はなすがままにされながら

(こんなに喜ぶなら作ってやってよかったな)

と思っていた。が、自分からは作ろうとは思わない。だって、男から男にというのはやっぱり恥ずかしいし、嫌々ながらというのが、自分の気持ちを素直に出さないのが俺だから。

END
10/03/18 19:42更新 / 旧作品集

■作者メッセージ
 たぶん、これは3年か4年ぐらいのバレンタインに書いたSSだと思います。
チョコレートの作り方は実際私が作ったのと同じ作り方だったように覚えています。


懐かしいですね。
当時付き合っていた旦那に作ったチョコと同じ作り方です。
あまあまかいていますね。

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