願い
休日の午後。
小さな公園でたまに葉月が寝ているという話を聞いた私は、その話の真偽を確かめるため、でかけた。
その話通り、寝ている葉月を見つけた私は早速起こそうとしたが、やめた。
葉月が幸せそうに寝ていたから。
確か、この前、鈴鹿らにひっぱってこられた時も寝てたし、たまにテスト中でも寝てる時がある。
寝るという行為は現実逃避をするためという場合もあるらしいが、まさか葉月に限ってそんな事はないと思うが…。
「葉月、起きなさい」
辺りも暗くなってきたので、起こしにかかる。
「う、うーん」
目を覚ました葉月は自分の状況を把握できないらしくキョロキョロ見渡す。
「また寝てしまったのか」
ぽつりとそうつぶやいた葉月に、すかさず私はたずねる。
「またとはよく寝るのか?」
「…よく寝る。ちょっとの休憩の筈だったのに」
不本意に呟く彼に、私は言ってしまった。
「それなら、これからは私の所に来なさい。ここで君が寝ているのは心配だ。今まで何もなかったのは、幸いだったが」
「わかった。そうする。じゃあ、先生。また」
そう言うと、頭を下げて立ち去った葉月を、私は心配になりながら見送った。
生徒としては申し分のない生徒だが、人としては落第生だ。
私にどこまで出来るかわからないが、卒業するまで、彼を少しでも変えてみせよう。
今のままだと今はよくても、いつか苦労する日が来ると思うから。
まあ、私が心配する必要はないかもしれないがな。
付き合いのある者がいるみたいだから、彼らがいい影響も及ぼしてくれるとも思うから。
END
10/03/18 19:28更新 / 旧作品集