雑記

読切小説
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思い出をふりかえりながら
「そうなんだ。お、じゃない私も行っていいのかな? うん。わかった。じゃあ、昼ごろ向かうね。それじゃあ、また」
 おれは受話器を置き、電話の相手、蓮川の事を思い出していた。
 出会いのきっかけは最悪。けど、なぜか走り出していた恋。
 あいつの勇気とおれの勇気があったから始まった今の関係。だからこそ、大切にしていきたいとは思う。
「巳夜、出かけるの?」
「うん、といっても、今度の日曜日だけど。あいつの住んでいる寮で祭りをするから来ないか?って」
「そう。気をつけて行ってくるのよ」
 最初は反対していたお母さんもあいつの人となりを見て、態度を軟化してくれている。
 まだ、問題は待ち受けるかもしれないけど、あいつとなら、頑張れる…、そうおれは思っている。

 日曜日、おれは出来る限りのおしゃれをして、緑林寮に向かった。
 ついた緑林寮は飾り付けがしてあり、門もあの晩とは違い、開かれていた。
 その門で待ってくれているあいつに、俺は駆け足で近づいた。
「待ったか?」
「いや、待たないよ。今、来たところ」
 あの晩とは違う、喧騒に包まれた緑林寮をあいつと並んで、踏み入れる。
「ずいぶん、賑やかなんだな」
「三年に一度だからというのと、新田美恵子がライブしてるからかな」
 歓声が聞こえてくるほうを見やってそういうあいつに、おれは疑問を投げかける。
「新田美恵子ってあのスーパーアイドルの? よく呼べたね」
「光流先輩が呼んで来た。ギャラなしで」
 光流先輩という言葉に、私は納得してしまう。
 光流先輩は私の中学校の時の先輩で、おれが光流先輩に頼ったことで、蓮川にも出会えた。
「寮母さん」
 蓮川が寮の入り口にいた寮母に声をかけたので、おれは慌てて頭を下げた。
「その節は御迷惑をおかけしました」
「いや、いいのよ。何事もなくてよかったわね。今日は楽しんで行ってね」
 おおらかに対応してくれる寮母さんにおれはほっとする。
「じゃあ、中に入るよ。スリッパ持ってきている?」
「うん」
 持ってきたスリッパを履き、寮内にあがる。
 寮内もあの晩と違い、飾りつけがしてあって、祭りと思わせる雰囲気になっていた。
 行く先々でからかわれる蓮川に、人気があるんだなと思いながら、それぞれの出し物を二人で楽しむ。
 そして、あいつはおれを部屋に連れてきた。
 部屋に入った途端、あの夜の事がこの前の事のように思い出される。
 光流先輩がこの寮にいなければ、蓮川が寮長でなければ、始まらなかったおれたちの恋。
 出会えた偶然に、おれは感謝をしていた。
「すかちゃん、ここにいたんだ? そろそろ交代の時間だって言っていたよ」
 美少女と間違える蓮川のルームメイトが部屋に顔を出し、そう言ったので、あいつは慌てておれにいってきた。
「瞬、悪い、もうそんな時間か。五十嵐さん、外まで送るよ」
「いいのか?」
「いいよ」
 蓮川は強引におれの手をとり、ひやかしの声をあびながら、出口まで連れて行ってくれた。
 そして、門のところでおれは蓮川に見送られ、寮を後にした。
 また、三年後、寮祭に二人で参加できる事を願いながら…。
 
END
10/06/25 12:58更新 / 宮間亜衣

■作者メッセージ
TOMO8さんのリクエストで
緑林寮祭を一緒に見回る一也と巳夜の姿を希望します。
という事で書いたんですが、
なぜかこのようになりました。

また書けたらこの二人は書いてみたいですね。

後、昔、友人と盛り上がった DQ3をここグリメンバーでというのも出来たら書きたいです。
いつになるかわかりませんが(^_^;)

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