雑記

読切小説
[TOP]
入学式前日のある風景
 明日、新入学生を迎えるきらめき高校も、今日は静かだった。
 人気もない校舎の中を真新しい制服を着た金髪の女性が、一つ一つ、確認するように歩いている。
 新入生のようだが、その迷いもなく歩く姿は新入生のようには見えなかった。
 その女性は、教室を全て回り終えると、外に出るのではなく、階段を登り、屋上へやってきた。
「緊急の場合はここでヘリに乗り込むのよね。なれているとはいえ、大変よね」
 ため息交じりで、そう呟いた女性は、屋上を囲む柵の一つへ歩いていった。
 そして、そこから見える巨大な樹をじっと見つめる。
「伝説の樹さん、先日の卒業式は何組、永遠を約束するカップルを生み出したのかしら? そして、私は三年後、そのカップルの一人になれるのかしら?」
 呟いた女性は、寂しそうにうつむいた。
「なれるわけないわよね。私がこの姿でいれるのは今日一日だけなんだから…」

「なれると思えば、なれるのじゃないんのですか? 最初から諦めるなんて、レイさん、らしくないですよ」
 突然、背後から声をかけられ、レイは慌てて、後ろを振り向いた。
 そこには、自分と同じく真新しい制服で身を包んだ、ピンクの髪を右と左で三つ編みした女性がたっていた。
「ゆかり、どうしてここに…」
「レイさんが制服を着て、出かけられたと聞いたので、多分、ここではないかと思いまして…」
「流石、幼馴染ね」
「レイさん、諦めないでくださいね。諦めなければ道は開かれる可能性が出るんですから」
 念を押すゆかりに、レイは笑顔で答えた。
「わかったわよ。諦めないって誓うわ」
「約束ですよ。レイさん、いえ、伊集院君」
「ええ」
 レイはそう答えると、ゆかりの最後の言葉に合わせるかのように
「わかったよ。ゆかりくん。明日からよろしく頼むよ」
と口調、声のトーンを少し落とし、答えた。
 そして、静かに微笑んだ後、レイはゆかりに向かって言った。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか? ゆかり、これからの予定はあるかしら?」
「ないですよ」
「じゃあ、もう少し付き合ってくれるかしら? 制服は着替えてだけど…」
「そうですね。いいですよ。じゃあ、レイさん、行きましょう」
 レイはゆかりと連れ立って、屋上から出て行った。

END
10/06/15 22:58更新 / 宮間亜衣

■作者メッセージ
旦那に書いてもらったイラストから思いついた話です。
どの話のOPにでも、使えるストーリーな気がします。
でも、諦める方向で考えちゃうんですよね。
ゆかりの怒る姿が目に浮かんできてます。

TOP | 感想 | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.34b
上へ