雑記

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新たなる伝説の始まり
 春、それは出会い、そして、別れの季節。
 きらめき市にあるきらめき高校でも、卒業式がとり行われた。
 今回の卒業式の中で、一番、注目を浴びていたのは、去年、在校生を薔薇の雨で派手に見送った、理事長の孫、伊集院レイだった。
 きらめき高校に伝わる伝説、“卒業式の日、伝説の樹の下で女の子から告白してうまれたカップルは永遠に幸せになる”もあって、卒業式の後、彼を探す生徒が多数いたが、彼の姿を見つける事が出来た者は誰もいなかった。
「伊集院君。見かけた?」
「ううん。校門から出た姿も見ていないのに、どこにもいないの」
「どこに言ったんだろ?」
「もしかして、ヘリコプターで帰ってしまったのかな? 伊集院君って、アメリカに行く噂あるし…」
「ヘリコプターの音、しなかったと思うけど…」
「そもそも卒業式にはでていたんですか?」
「出ていたわよ。卒業生答辞は藤崎さんだったけど、クラス代表で卒業証書受け取っていたから」
「伊集院君がこんな立ち去り方すると思わないんだけどな…」
 卒業生、在校生交えて、話す輪の横を、薔薇をあしらったリボンが印象的な制服を着た金髪の女性が通り過ぎた。
「えっ、今の子、誰か見かけたことある?」
「ううん。一度見たら忘れない容姿だったわよね」
「指定の制服のリボンじゃなかったし、誰かが制服を借りて、潜り込んだんじゃない? きらめき高校生になりすまして、伝説を遂げたい子とか…」
「それ、ありうるかも…」

 その頃、屋上には一人の男子生徒が訪れていた。
「ここにもいない。どこ行ったんだよ、伊集院」
 伊集院を探すのが女性ばかりの中、ただ一人、彼は伊集院を探していた。
「俺が知る伊集院ならこんな事しない筈なのにな…」
 心あたりを捜し歩いたらしい彼は、とぼとぼと自分の教室へと戻った。
 
 そして、その頃、噂の主であるレイは、誰もの予想通り、きらめき校舎内にいた。
 誰も予想しなかった姿で…。
(私のリボンで気付かないとは節穴ね、皆。まあ、誰も私が女性だとは気付かなかったものね。ただ一人以外は…)
 そう、女子生徒達の横を通り過ぎ、その後も、様々な場所で目撃された金髪の女性が伊集院レイだったのだ。
{彼女達の考えもあながち間違いではなかったけどね。私がこの姿になったのは伝説を実行するためだから…)
 伊集院家で定められた家訓を今日一日という所で破り、自分の姿を探し回っている生徒達を困らせたのは、今日しか行えない伝説を行うためだった。
 行うといっても、相手が承知してくれなければ無理なのだが…。
 レイは、いつか理事長として戻ってくるであろう高校を隅々まで見回ったあと、今回の本来の目的地である伝説の樹へ向かった。
 遠回りしてたどり着いた伝説の樹は夕焼けに染まり、綺麗な姿でレイを出迎えてくれた。
 その姿は去年の秋、屋上から見た伝説の樹を彷彿とさせた。
「あの時はごまかしてしまったけど、本当は伝説を信じている。伝説の樹は私の勇気の元だから…」
 伝説の樹の前で、そう呟くレイに
「あの時は信じないと言ったけど、俺も信じるよ。お前がここにいていたから、伊集院」
と背後から声をかけられた。
 忘れられない声とその内容に驚いたレイは、慌てて後ろを振り向く。
 そこには、先ほどレイを探していたレイのクラスメイトである男子生徒がいた。
「どうして…」
「何故、ここに来たのだったら、お前が呼び出したから。何故、気付いたかというなら、手紙の字がお前の字だったっていうことと、先月の保健室の件があったたからかな。後、チョコレートと…」
 レイが聞きたかった事を全て答えるクラスメイトに、レイは何もいえない。
「お前が卒業式の後、姿を消した理由がわかって、俺は嬉しかったぜ。きらめき高校を愛するお前が、今まで大切にしてきた女子生徒を裏切ると思わなかったからな」
「きらめき高校を私が愛している?」
「そう、愛していなければ、大変なのに、パーティとか主催しないだろ。誕生日だって、主賓のくせして、走り回っているしさ」
「そんな風に見ていてくれたんだ」
「三年間ずっと一緒だったからな。事あるごとに嫌味言ってくるから、気になる存在にもなったし…」
「あれはあなたに嫌われようと…」
「逆効果だったよ。一時期、ホモになってしまったんだろうかと悩んだときもあったしな」
「ごめんなさい。そんなつもりでは…」
「なかったというのはわかるぜ。俺の電話には忙しいだろうに毎回出てくれたもんな」
 電話がかかってくるだろう時間はわざと空けていた事を暗に示唆する言葉に、レイは赤くなる。
 そんなレイを暖かく見守ってくれるクラスメイトに勇気を貰ったレイは、大きく深呼吸して、一気に言葉にした。
「気付いていると思うけど、私はあなたが好きです。否定的な返事でもいいんで、返事をください。お願いいたします」
 頭を下げるレイを、クラスメイトはレイの頭を上げてから、微笑みながら、伝える。
「お前に伝説の樹の下に呼び出されて、わざわざ来た俺が断るわけないだろ。俺も、伊集院が好きだよ。一生懸命で健気で少し計算違いしてしまう伊集院がさ。嫌味とか言われなかったら、ただのクラスメイトだったのにな」
「それなら、嫌味を言い続けてよかったです。あなただけは諦めたくなかったから…」
「俺も電話をし続けてよかったと思うよ。最初はからかい半分だったけど、最後は離したくないと思っていたから…」
「ありがとうございます」
 頭を再び下げるレイに、クラスメイトは慌てて言う。
「頭を下げるなよ。下げたいのはこっちなんだから。伊集院、そろそろ暗くなるし、ここから移動しないか?」
 クラスメイトの言葉に、レイも頷く。
「そうですね。もし、よろしければ、これからいろんな場所に付き合って頂けませんか? 一日ぐらい普通の学生として寄り道してみたいので」
「俺でよければとことん付き合うぜ。三年間あまり出歩いてないから、詳しくはないけど…」
「ありがとうございます。じゃあ、最初はきらめき公園に行きましょう」
 レイとクラスメイトは連れ立って、伝説の樹から立ち去った。
 
 卒業式の日、一度だけきらめき高校に現れた金髪の女子生徒の話は、他の卒業生の噂と一緒に、後輩達の手によって、噂された。
 その噂は少し変わる伝説の樹の伝説とともに、永遠に伝えられた。
 
END
10/03/12 21:58更新 / 旧作品集

■作者メッセージ
データが消えてしまったので、もう一回書き直してみました。
前回、旦那に突っ込まれた大阪弁を出ないように気をつけてみたのですが、いかがでしょうか?

後、今回は放課後の四つのイベントをすべて入れてみました。
前回は三つだったので。

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