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フェンの旅立ち
※この話はドラゴンクエスト9の世界観を活用したオリジナルストーリーです。
ゲーム上に登場する人物が出てきますが、設定が違う場合が多々ありますので、ご了承願います※

 セントシュタインの城から北にあるエラフィタ村。
 農業と林業が盛んなこの村にも、外の世界に憧れる若者がいた。
 その若者の名はフェン。代々続く木こりの家に産まれ、誰もが家業を継ぐと信じていた。
 そう、小さい頃から斧を構え、家業の手伝いをしてきたフェン自身も家業を継ぐ事に異論はなかったが、継ぐ前に一度自分の力を試してみたかった。
 その思いを口にした時、誰もが反対した。彼の力を知らない訳ではなかったが、小柄な彼が世間に通用するとは誰も思わなかったからだ。
だが、諦めきれなかったフェンは、期限を決めることで、旅立ちの許しを得ることにした。
 その期間はたったの三年。
 無謀と思える期限設定に、許さない者はいなかった。

 フェンが村を旅立つ予定をしていた日の前日。村を地震が襲った。
 そのことにより、フェンは旅立ちの日の変更を余儀なくされた。
 変更ではなく、中止を提案する村人もいたが、フェンの両親が一度約束した事だからと言ってくれたことにより、変更で済んだ。
 両親がそういう風に言ってくれた事を、フェンはかなりありがたいと思うと同時に、自分の樹がすんだら、すぐにでも村に戻ることも決心していた。
 それは、異常事態が発生している時こそ、若い働き手がいるというのに、自分のわがままを両親が認めてくれたから、だった。

 地震騒ぎがあった一週間後。夜が完全に空ける前に、こっそりとフェンは村を旅立った。
 地震騒ぎで落ち着いていない中、堂々と出かけることは、さすがのフェンにもできなかったから。
 村を旅立ったフェンの最初の目的地は、南にあるセントシュタインの城下町。
 世界に出ていくにしろ、セントシュタインを目指すのが一番と村に訪れている旅人が教えてくれていたから。
 小麦畑に挟まれてた街道をひたすら南にフェンは向かう。
 途中、何度か、モンスターに襲われたが、普段からモンスターと戦ってきたフェンの敵ではなかった。
 が、なれない一人旅のため、予定していた距離の半分も辿り着かないまま。日暮れを迎えることになった。
 夜の間も歩くこともフェンは考えたが、最初から無理するのもいけないと思い、野宿の準備を整えることにした。
(明日の夕方にはセントシュタインの城下町につくはずだ。そこで今後の行く先を決めたらいい)
 今後の予定を心に決め、フェンは眠りに就いた。

 翌朝、陽が昇ると同時に目が覚めたフェンは、簡単に朝食をすませると、再び、セントシュタインへ向かった。
 エラフィタ地方とセントシュタイン地方を分けるように流れる川を渡ると、セントシュタイン城を後ろ姿を確認することが出来た。
(確か、ここを右に向かうんだったな)
 旅人に教えられた事を思い出しながら、セントシュタイン城を囲む塀に沿って歩く。
 その間も何度かモンスターと遭遇したが、エラフィタより弱いモンスターはフェンの敵ではなかった。
 陽が頭上から西に傾きかけた頃、ようやく、塀の終わりが見えた。
 ほっと安堵のため息をついたフェンの視界に、何体ものモンスターに囲まれた女性二人の姿が入ってきた。
 フェンは考えるより先に、その女性たちの所にかけよっていた。
 そして、斧を振り回し、一撃でそのモンスターグループを倒していた。
「ありがとう。助かったわ。私はルイーダ。あなたの名前は?」
 二人の女性のうち、旅なれた服装をしたその女性、ルイーダがそう聞いてきたので、フェンはすかさず答えた。
「俺はフェンだ」
「フェン…、いい名前ね。見た所、冒険者みたいだけど、当てはあるのかしら?」
 ぶしつけなルイーダの問いかけに、フェンは回答につまった。が、正直に言っても損はないと判断し、答えた。
「いや、ない。セントシュタインで探そうと考えていた」
「じゃあ、私の酒場に登録しない? 今は休業中だけど、近々再開するから。当てもなく探すよりは効率的だと思うわよ。旅の連れを探す人も来そうだし…」
 ルイーダの提案に、フェンは真剣に悩んだ。
 ルイーダの言う通り、当てもなく探すよりは効率的だし、何よりフェンには時間がない。
「考えさせてもらうよ」
 即答で返事を返す事をためらったフェンはそう答えると、
「今日中に着きたいから、先に行くな」
と言って、ルイーダ達と別れた。
 ルイーダ達がいた場所からセントシュタインの街の入り口はすぐ近くだったので、陽が暮れないうちにセントシュタインにフェンはたどり着くことが出来た。
 セントシュタインの街は、襲ってきた黒騎士の話題一色で、冒険者として名をあげるチャンス到来だとフェンは思った。
 が、騎士団でも歯がたたない黒騎士に一人で挑む勇気はなかった。
(ルイーダさんの酒場に行ってみるかな)
 フェンは先程会話したルイーダのことを脳裏に浮かべ、街の入り口にあった大きな宿屋に行ってみることにした。
「いらっしゃいませ〜」
 宿屋の建物の中に入った途端、元気よく声をかけてきたのは、先程ルイーダと一緒にいた女の子だった。
「フェンさん、先程はありがとうございました。私はリッカと言います。登録されるならこちらの方で待ってて下さいね。ルイーダさんが来られると思いますので」
 笑顔で応対する女の子、リッカに席を案内され、言われるがまま、その椅子にフェンは腰をかけた。
 一息をつかないまま、自分より二回りも大きい女性を連れて、ルイーダがフェンの目の前にやってきた。
「フェン、登録に来てくれたのかしら?」
「そのつもりだけど」
「ありがとう。じゃあ、早速なんだけど、この子と組む気ないかしら? 一人で故郷に向かっている子なんだけど、黒騎士退治に向かうと言っているから」
 黒騎士退治という言葉に反応して、フェンはその女性を見た。
 真剣な目をしているその女性が酔狂で黒騎士退治に行くとは思えなかったが、二人は少し心細かった。
 そのフェンの気持ちを見透かしたように、ルイーダが言った。
「後、二人、僧侶の男性と魔法使いの女の子にも声をかけてるわ。その二人は今は別用ででかけてるんだけどね。どうかしら? 彼女の腕は私が保証するけど」
 始終、黙ったままの女性にフェンは少し不安だったが、ルイーダの保証を信じることにし、パーティを組むことにした。
 その組んだパーティが広い世界を旅し、最後には世界を救うことになるとは、この時のフェンは夢にも思っていなかった。

フェンの旅立ち END
10/03/17 22:51更新 / なのか(nanokayuri)

■作者メッセージ
天使の仲間たち、フェン編です。
彼には愛着ありますね。

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